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    FINAL FANTASY W 〜力合わせて・6〜

     アスラの放つ白魔法の優しい光が、セシル達の傷を癒していく。
     そして、アスラが幻界へ還ると同時に、リディアががくりと膝をついた。その肩が激しく上下している。やはり今の召喚魔法はリディアにとって相当の負担だったのだ。
     アスラの白魔法で仲間全員の火傷は完治している。しかし、幻獣の力であっても精神的な疲労までは癒すことは出来ない。
     ルビカンテの視線が、とうとう地面に座り込んでしまったリディアを捉える。その視線を遮るように、エッジがルビカンテに駆け寄りつつ叫ぶ。
    「そろそろ、決着つけようぜ! ルビカンテッ!!」
     エッジの忍刀での攻撃を受けたルビカンテの身体が、僅かによろめいた。先程、フースーヤが放ったブリザガが効いているらしい。
     その隙を見逃すエッジではない。瞬時に後ろに飛びのくと、素早く刀印を切った。
    「――氷遁!!」
     至近距離から放たれた忍術を避ける術など、ルビカンテにあるはずもない。氷遁はルビカンテに直撃した。
     ローザが弓を構え、矢を放つ。その矢はルビカンテの肩に深々と刺さった。同時に、フースーヤがバイオを発動させる。それを追うように、セシルが剣を真横に構えつつ突っ込む。
     ルビカンテの火炎流は脅威だ。セシル達は体力的にも限界が近い。ルビカンテに体勢を立て直す時間を与えてはならない。今、攻めなければならないのだ。
    「――終わりだっ!!」
     セシルの全身全霊を込めた一撃は、ルビカンテの身体を深々と薙いでいた。

    「我らの……完敗だ……!」
     負けたという割には、どこか満足そうな笑みを浮かべて。ルビカンテは地面に倒れた。
     それを見届けた全員が、同時に息をつく。
    「だーっ! きっちぃ!! こんな連戦、もう二度とごめんだぜっ!!」
     地面にべたりと座り込んで、エッジがそんな叫びを上げる。それに、緩慢な動作で剣を鞘に納めたセシルが頷いた。
    「うん、僕ももう嫌だ。……やっぱり、四天王は強敵だったね。勝てて良かった」
     それでも何とか勝てたのは、四天王が本当の意味で力を合わせていなかったからなのではないか。リディアは、そんな風に思う。
     四天王の戦い方は、力を合わせるというよりは互いの力をただ利用しているだけのように見えた。
     それは本当に力を合わせるということなのだろうか。
     少なくとも、リディアは違うと感じている。戦いにおいて力を合わせるというのは、仲間の戦い方や得意なことはもちろん、苦手なことも理解したうえで互いのことを信じることなのだと、リディアは思っているからだ。
     これは簡単なようで、すごく難しい。
     命を懸けた戦いの中でお互いのことを信じるということは、己の命を預けることと同義だからだ。
     リディアだって、エッジが先陣を切って切りかかり敵の注意をひきつけ、それを抜けてきた敵をセシルが防いでくれると信じているから、魔法の詠唱に集中できるのだ。
     エッジやセシルだってそうだろう。リディアの攻撃魔法やローザの白魔法での援護があると信じているから、敵に立ち向かっていける。
     それは一朝一夕に出来るものではない。隙あらば相手を出し抜こうと考えているのならば、難しいどころの話ではないだろう。
     四天王は、互いを信じることが出来なかった。だから、力を合わせると言いながらも、互いを踏み台にするような挑み方しか出来なかった。
     確かに、四天王一人一人は強敵で、連戦も辛かった。けれど、それだけだ。
     お互いを信じず、力を合わせると言いながらも結局孤独に戦った四天王と、お互いを信じあい、今この場にはいなくても外でともに戦う仲間がいるリディア達。どちらに分があったかは、結果が物語っているだろう。
    「……大丈夫か?」
     物思いに耽っていたリディアは、エッジがいつの間にか立ち上がって、リディアの側に来たことに気付いていなかった。だから、突然目の前で振られた手に、肩をびくりと跳ねあげる。
    「わあぁっ!? エッジ、いつの間にっ!?」
    「……随分、ぼーっとしてんな。大丈夫かよ?」
     気配に聡いリディアが、特段気配を消しているわけでもないエッジに気付かなかったのだ。エッジが心配そうにリディアを覗き込む。
    「大丈夫だよ〜。召喚魔法たくさん使ったから疲れちゃったけど……。でも、魔力の方が厳しいかも。エーテルある?」
     体勢を整えるため、ここで小休憩くらいは取るだろうが、そんなに長くは休んでいられない。
     そうなると、魔力の自然回復を望むのは厳しい。それはエッジも承知なのか、エーテルの入った瓶をリディアに差し出した。
    「魔力はエーテルでも回復するけど、精神疲労はそうもいかねーだろ? ちょっとでも眠れば違うんじゃねぇの?」
    「うん。……でも」
     エッジの気遣いは嬉しいが、すぐに出発するのではないだろうか。そう思って言葉を濁すリディアに、フースーヤが声をかける。
    「……この先に、巨人の制御システムと制御システムを守る防衛システムがある。……少しは休んだ方がいい」
    「……だってよ」
     フースーヤとエッジに促されて、リディアは壁際に移動して、座り込んだ。リディアの隣にローザもやって来て、床に座り、壁に寄り掛かる。
     眠れなかったとしても、目を閉じてリラックスするだけでも、だいぶ違う。二人はゆっくりと目を閉じたのだった。

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