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    FINAL FANTASY W 〜力合わせて・3〜

    「待ちかねたぞ!」
     口元に薄く笑みを浮かべて、炎のルビカンテがセシル達に声をかける。
    「ほっほほほ! 巨人は止まらぬ!」
     風に長い髪をなびかせた風のバルバリシアが妖艶に微笑む。
     セシルは剣の柄に手をかけ、エッジが忍刀をすらりと抜いた。
     水のカイナッツォが笑い声を上げた。
    「クカカカカ……! ここから先には進めぬぞぉ!」
    「ふしゅるるる……お前たちは、ここで屍になるのだからな!」
     そう言ってにやりと嫌な笑みを浮かべたのは、土のスカルミリョーネだ。
    「四天王……!」
     セシルが剣を抜いて身構えるとほぼ同時に、仲間達が低く身構える。
    「ゼムス様より授かったこの力……」
    「そして授かったこの命で……」
    「お前達を、殺す……!」
     スカルミリョーネ、カイナッツォ、バルバリシアが口々にそう言う。
    「また、お前達と戦えるとはな! だが、我らもこの前とは一味違うぞ。お前達に教えられたのだからな。力を合わせて戦うということを……」
     ルビカンテがばさりとマントをはらう。朗々と語るその声は、歓喜に満ちていた。
    「さあ、回復してやろう」
     その言葉とともに、セシル達を淡い回復の光が包み込む。
    「――持てる力の全てで、かかってこい!!」

     エッジが力強く地面を蹴るのと、スカルミリョーネが一歩前に出たのはほぼ同時だった。今回は最初から獣型の姿だ。本気だということだろう。
    「貴様らなぞ、新たな力を得たこの土のスカルミリョーネ一人で葬り去ってくれるわ!!」
     我が強く、功名心が高そうな四天王が力を合わせられるのかと思ったが、さすがに肩を並べて戦うことはしないようだ。長期戦にもちこんで、セシル達の消耗を狙っているのだろう。
     実際、四天王と四連戦するのだ。状況はかなり厳しい。だが、ここで負けるわけにはいかないのだ。
    セシル達の敗北は、外で巨人を押しとどめている仲間達の死をも意味するのだから。
    「はっ! 弱い犬ほどよく吠えるってな! でかい口叩いて、吠え面かくなよ!?」
     エッジが鼻で笑い飛ばすと、スカルミリョーネの腕に切りつけた。
    「我らに、聖なる守護と盾を与えたまえ! ――プロテス」
     フースーヤの放ったプロテスの光がセシル達を包み込んだ。
     スカルミリョーネが腕を大きく振り上げる。その狙いはフースーヤだ。セシルはフースーヤの目の前に滑り込み、盾をかざす。その瞬間、太い腕が振り下ろされた。
     がつんと鈍い音が響き、腕が弾かれる。相変わらず、力が強いらしく盾を支えていた両腕がびりびりとした。
    「――……聖なる祝福と大いなる慈悲にて、我らを癒したまえ! ケアルガ!!」
     一番強力な回復魔法が、スカルミリョーネに向かって放たれる。スカルミリョーネが苦悶の声を上げた。人々を癒す白魔法も、死霊であるアンデットにとっては有効な攻撃手段となる。
     もがき苦しむスカルミリョーネに向かって、エッジが手裏剣を投げつて飛び退る。
     同時にリディアの召喚魔法が完成した。
    「……来たれ、煉獄の覇者。灼熱を統べし者よ! 地獄の火炎にて全ての邪悪を灰塵と化したまえ! 我が呼び声に応えて出でよ。炎の魔人――イフリート!」
     召喚に応じて現れたのは炎をまとった鬼だ。イフリートがスカルミリョーネに向かって駆けていく。そして、地獄の炎がスカルミリョーネを包み込んだ。
    「――っ!?」
     スカルミリョーネが声にならない悲鳴を上げ、がくりと膝をつく。しかし、その巨体はまだ倒れてはいない。
     セシルは剣の柄を握りしめると、一歩踏み込んだ。
     前にスカルミリョーネと戦った時、セシルは暗黒騎士であるがゆえに何も出来なかった。だが、今は違う。聖騎士であるセシルが使う聖剣は、アンデットにとっては脅威となる武器だ。
     気合とともに剣が斜め上から振り下ろされ、スカルミリョーネの身体を引き裂く。
    「ゼムス、様……!」
     床に倒れたスカルミリョーネが小さく呟いたのを聞きつつ、セシルは残りの四天王に視線を向ける。
    「クカカカカ……! スカルミリョーネを倒したからと、いい気になるなよぉ……!」
     特徴的な笑い声を上げながら、水のカイナッツォが一歩足を踏み出したのだった。

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