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    FINAL FANTASY W 〜力合わせて・2〜

     潜入した巨人の内部は、ゾットの塔やバブイルの塔と構造が酷似している。
     全て月の民の技術で造られたのだから、似ているのも当然だ。そして、今のこの星の技術ではほとんど再現が難しいのだから、月の民の技術はかなり進んでいるのだろう。
     巨人の心臓部を目指して歩きつつ、周囲を警戒していたセシルはふとそんなことを思った。
    「……にしても、堪んねぇな。敵が機械って厄介だぜ。……気配が全くしねぇ」
     エッジが小さく舌打ちして、小さく毒づく。
     巨人の内部には防犯用の敵探索機や警備用の兵等が徘徊している。
     生物ではないこれらが衣擦れやら殺気やらを発するはずもない。歩行型の機械ならば歩行音から察することが出来るが、浮遊している探索機に気付くというのはどうしても難しい。
     そして、探索機に発見されると他の機械達が集められ、一回の戦いが予想外に長引くことになってしまう。
    「……疲れちゃうよね。いきなり現れるんだもん」
     それはやはり気配に聡いリディアも同じらしく、小さくため息をついた。
     確かに、常に周囲の警戒を怠れないこの状況ではいつもより気疲れしても仕方がないだろう。
     その時、通路の先から探索機が現れた。それはすぐさまセシル達の姿を捉えると、ビービーッとけたたましく警戒音をたてた。
    「あーっ! うっせえっつの! 雷遁っ!!」
     苛立ちの声を上げたエッジが素早く印を切ると、雷が探索機を貫いた。探索機から白い煙が出て、音が止まる。そこにローザの放った矢が突き刺さり、探索機が爆発する。
     ここでの機械との戦闘にも慣れてきたのか、手際が良くなっている。探索機を倒したスピードは今までで一番早かったように思う。
     警戒音を聞いた機械兵が集まって来るものの、数は少ない。機械兵が一体に、巨人兵が一体だ。
    「「――サンダガ!!」」
     集まってきた機械兵達に、リディアとフースーヤの黒魔法が炸裂する。眩い白銀の雷が機械兵達に幾重にも降り注ぐ。目を細めて様子を見ていたセシルは、雷撃の中で辛うじて立っている巨人の姿を認めると、剣の柄を両手で握りしめて地面を蹴った。
     そして雷が収まったその瞬間。セシルは巨人兵の懐に飛び込むと、渾身の力で胴に切りつけた。
     巨体が床に崩れ落ちる。セシルの剣が薙いだ部分からはばちばちと火花が散っている。このままでは爆発するだろう。
    「離れた方がよさそうだなっ! 行こーぜっ!」
    「うん!」
     仲間を促しつつ、エッジが殿を務める。その後にリディア、フースーヤ、ローザと続く。最後尾のセシルが剣を鞘に収めつつ駆け出したところで、背後で巨人兵が爆発する。
     大きな爆発音が響く。もしかしたら、他の機械兵が集まってくるかもしれない。
     それは、エッジも同じ考えだったのだろう。フロアを移動するまで、エッジが走る速度を緩めることはなかった。
    「あー、マジでめんどくせぇ! せめてさくさく倒して、なるべく無駄な体力使わないようにするしかねーかな」
     うんざりとした口調でエッジが叫ぶ。彼がここまで愚痴を口にするのも珍しい。それだけで、エッジが相当この環境に参っているのだと分かる。
    「ここの警備はほぼ機械によるものだ。確かに強力な機械ばかりだが、弱点はみな同じ。戦闘に慣れたそなたたちならば、それほど苦でもあるまい」
     そんなエッジに、フースーヤが静かに返す。
    「まあ、確かにどいつもこいつも弱点が雷で楽っちゃ楽だけどよー」
    「それに、ここにそう長くいることはあるまい。心臓部まではもうすぐだ」
     その言葉に、全員のまとう空気がわずかに緊張を帯びる。
    「ちなみに、心臓部には何が……?」
     ローザの問いに、フースーヤは目を細めた。
    「制御システムと、それを守る防衛システム、迎撃システムがある」
    「制御システム……。それを止めれば、巨人は止まるんですね?」
     フースーヤはセシルに頷いて見せる。
    「そのとおりだ」
    「んじゃ、とっととその制御システムとやらのとこまで行こうぜ! ……ん?」
     エッジは小さく呟き、足を止めた。そして手振りだけで仲間達に止まるように促す。
    「どうしたんだい、エッジ。……人影?」
     エッジが鋭い目で見ているものに、セシルも気付いた。目の前に、機械兵とは異なる気配を放つ影がよっつ、佇んでいる。
    「あれは……」
     目の前に立ちはだかるその姿に、ローザの表情が強張り、セシルは息を呑んで大きく目を見張る。
     そして、エッジが、感情を抑えた低い声で呟いた。
    「……ルビカンテ」
     エッジの声は小さかったのに、いやに大きくその空間に響いた。
     そこには、セシル達がこの旅の道程で倒したはずの、ゴルベーザ四天王の姿があった。

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