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    FINAL FANTASY W 〜力合わせて・4〜

     カイナッツォの亀のような姿を見ながら、セシルは前に一度戦った時のことを思い起こす。
     確か水のバリアを張り、雷撃魔法でそのバリアを解除出来たはずだ。
     間合いを取るようにカイナッツォから数歩離れたセシルは、顔はカイナッツォに向けたまま、リディアとフースーヤの名前を小さく呼んだ。リディアとフースーヤの注意がセシルに向くが、二人とも声には出さない。
     セシルはカイナッツォに注意を向けたまま、言葉を続けた。
    「奴は水のバリアを張る。どちらかが、雷の呪文で解除してくれ」
    「では、その役目はそなたに頼もう」
     小さく、フースーヤが言う。リディアは先ほど召喚魔法を使ったばかりだから、彼なりの配慮なのだろう。
    「うん。任せて」
     リディアもまた小さくそう呟く。それを合図にしたかのように、エッジが飛び出した。しかし。
    「クカカ! 緩やかなる時よ、その流れに汝が身を委ねたまえ! スロウ!」
     カイナッツォがエッジに向かってスロウを放った。すると、エッジの動きが目に見えて遅くなる。
    「ちっ!」
     エッジは小さく舌を打ちつつも、足は止めない。そのまま、忍刀でカイナッツォに切りつけた。だが、彼本来の持ち味であるスピードが生かせないせいか、その攻撃はあっさり受け止められ、弾き飛ばされる。
     その際に爪でも当たったのか、エッジの腕には深い裂傷が刻まれていた。
     スロウがエッジにかかった瞬間からヘイストの呪文を唱えていたローザが、詠唱しつつも眉をしかめた。怪我の程度がひどいらしい。
    「――ヘイスト!」
     ローザはエッジに向けてヘイストをかけてスロウを無効化すると、すぐさま回復呪文の詠唱を開始する。
     その時、強く水の匂いを感じた。水が、カイナッツォの周りに集まっていく。だが。
    「輝ける光よ! 彼の者に裁きを! サンダー!」
     リディアの魔法が炸裂し、瞬時に水のバリアが霧散する。同時に、静かに詠唱していたフースーヤの魔力が解放された。
    「……彼の者に無慈悲なる断罪を与えよ! ブリザガ!!」
     いくつもの氷の槍がカイナッツォに向って降り注ぐ。タイミングを計って地面を蹴ったセシルは、ブリザガの発動が終わった瞬間に剣で甲羅と身体の境目辺りに突きを繰り出した。
    「ぐっ……!」
     くぐもった声を上げるカイナッツォの足に、鳴弦とともに矢が深々と突き刺さる。エッジの回復を終えたローザだ。そして。
    「食らいやがれっ! 亀もどきっ!! 氷遁っ!!」
     いつの間にか九字を切っていたエッジの氷系の忍術が発動する。
    「……ま、またもや……!」
     既に動きの鈍かったカイナッツォはそう呟いたきり、動かなくなる。
     それを見たバルバリシアが、口元に妖艶な笑みを浮かべつつ、ふわりと宙に舞う。
    「……くっ」
     さすがに三連戦目になると疲労を感じるが、向こうが休憩を許してくれるはずもない。これこそが、四天王なりの力を合わせた戦い方なのだろう。
     セシルはぐっと剣を握り直すと、先制とばかりに地面を蹴って、下から振り上げるような一撃を繰り出す。
     だが、バルバリシアは笑みを浮かべたまま、その攻撃をかわした。
    「ほっほほ! 攻撃に疲れが見えるわよ! そして、空中戦を得意としたカインはいない……! お前達に勝ち目はないわ!」
     そう言うと、バルバリシアはその身に竜巻をまとった。
    「あんなすごい竜巻じゃ、剣とか届かないよっ!?」
     それを見たリディアが叫ぶ。確かに、その通りだ。そして、バルバリシアの言うとおり、以前戦った時にジャンプ攻撃で竜巻を解除してくれたカインはいない。
     そんな状況だけを見ると、セシル達にとっては不利な戦況だ。
     けれど、あの時とは、セシル達の実力も仲間の構成も違う。魔法による攻撃手段が格段に増えている今なら、竜巻をまとったバルバリシアとも戦えるはずだ。
    「バルバリシアの、弱点は……!」
     セシルの言葉に応じて、エッジが道具袋の中に手を突っ込む。彼が取りだしたのは、一冊の本だった。

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