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    FINAL FANTASY W 〜ふれあう心・2〜

     暗い塔の中を抜けて飛空艇が飛び出すと、一気に視界が開けた。そうして最初に目に映るのはマグマの海が放つ赤い光。その光景に、エッジが目を見開く。
    「うおおおっ!? 何だ、ここ!? あっちぃ!!」
     地底世界を初めて目にしたなら、この反応は無理もない。驚きの声を上げつつも舵から手を離さないし、機体も安定しているのだから大したものだとセシルは思う。エッジは飛空艇乗りの才能があるのかもしれない。
    「地底世界だよ。下は溶岩の海だからね。熱気がすごいんだ」
    「地底だと!? あの塔、地底から天高く伸びてるってのか……」
     エッジはバブイルの塔を一瞬だけ振り返って、呆然と呟いた。そこに飛空艇の様子を調べていたらしいカインが近づいてくる。
    「セシル。この飛空艇では溶岩の上の飛行は難しそうだ。耐熱仕様にはなっていない」
     その言葉にセシルは頷くと、舵を握るエッジを見た。
    「そうか。じゃあ、ひとまずドワーフの城に向おう! エッジ、南東の方角へ進んでくれ!」
    「あいよー!」
     威勢のいい返事とともに、エッジは舵を切った。地底の空を飛空艇が翔ける。

     ローザはファルコンのキャビンを一人で歩いていた。
     女性には外の暑さは辛いだろうとの男性陣の配慮で、ローザとリディアはドワーフの城に到着するまでキャビンで待機することになったのだ。その時間を利用して、ローザは飛空艇内をくまなく見回っていた。
     セシルと比べれば飛空艇に詳しいわけではないが、ローザとてバロンの軍人だ。飛空艇に関しての基礎的な知識くらいはある。
     とはいっても、飛空艇内部を見て分かったことは、この飛空艇に使われた形跡が全くないということくらいだった。
    「……敵が開発途中だった飛空艇、というところかしら……」
     そんなことを呟きながら歩いていると、前方にキャビンの窓から外を見つめるリディアの姿が見えた。
     どこか遠くを見るような表情で外を見ているリディアの大人びた表情に、この子は本当に大人になってしまったのだということを実感する。
     そのことに一抹の寂しさを感じながら、ローザはゆっくりとリディアに歩み寄った。
    「リディア」
     そう声をかけると、リディアは弾かれたようにローザを振り返って、翡翠の瞳を瞬かせた。
    「わわっ!? ローザ!」
    「ああ、ごめんなさい。びっくりさせてしまったわね。……何をしてたの? どこかぼーっとしているように見えたけれど……疲れちゃった?」
     そう尋ねると、リディアはふるふると首を横に振った。
    「違うの。……あのね。……声が、聞こえた気がしたの」
     リディアの言葉に、ローザは首を傾げる。
    「声? セシル達の声、じゃなくて?」
    「うん、違う。……でも、今は聞こえない……。気のせいだったのかな。呼ばれている気がしたんだけど……」
     どこか戸惑うような様子でそう言ったリディアは、再び視線を窓の外に向けた。その瞳がある地点で止まる。その視線を追うように外を見たローザは、エッジが舵を握っている姿に目を止めた。その横ではセシルが何やら指導をするような素振りを見せ、カインがそれを見守っている。
     エッジが何かを言って、セシルが笑った。それにつられるかのようにエッジも笑う。
     あんな悲劇の直後とは思えないエッジの様子に、ローザは目を細めた。
    「思ったより、元気そうね。……彼は強いのね」
     ローザのその言葉に、リディアは何か言いたそうな視線をローザに向けた。だが、リディアは結局口を噤んでしまう。
    「リディア?」
    「……想いって、言葉にするのが難しいね。ずっと色々考えてるんだけど……どう言えばいいのか、分からないの」
     その言葉に、ローザは目を細める。リディアが仲間になってからの短い期間に様々なことがあった。心の内や想いをうまく言葉に出来ないことは幾度もあったのだろう。もどかしい思いを何度もしたに違いない。
    「……そうね。難しいわね」
     同意すると、リディアが瞬いてローザを見上げた。
    「ローザも?」
    「もちろんよ。セシルやカイン……エッジだってそうなんだと思うわ」
    「そっか。……うん、そうだよね」
     リディアは小さく頷いた。それと同時に飛空艇がだんだんと高度を下げていく。
    「……ついたみたいね」
    「ドワーフさん達、大丈夫だったのかな?」
     バブイルの塔の戦力を引きつけて戦ってくれたドワーフ達は無事だろうか。心配そうなリディアの頭をローザは優しく撫でて、微笑んだ。
    「それも確認しなきゃね」
    「うん」
     そうして、ファルコンは微かな振動とともに地底の大地に着陸したのだった。

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