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    FINAL FANTASY W 〜ふれあう心・3〜

    「おぬしたち、無事だったか! ……して、クリスタルは!?」
     ドワーフの国の王であるジオットの言葉に、セシルは思わず俯いてしまった。
    「ジオット王。……実は……」
     これまでのことを報告すると、ジオット王は表情を曇らせた。
    「そうであったか。……ならば、最後のクリスタルを死守するほかに方法はない」
    「最後のクリスタル……封印の洞窟にあるという?」
     カインの問いかけにジオット王は頷く。
    「そうじゃ。……ゴルベーザが封印の洞窟の封印をこじ開けるのも時間の問題であろうな……。ルカ、こちらへ」
    「父上、何か?」
     ジオット王に呼ばれて現れたのは、ドワーフの姫君・ルカだ。
    「その首飾りをセシル殿に。……これは封印の洞窟の入口を開ける鍵なのじゃ! それがない限り、洞窟は何者も受け入れぬ。封印を強引に解かない限りは。……セシル殿、それで最後のクリスタルを守ってくれ!」
     セシルはルカが差し出した赤い石のついた首飾りを受け取ると、ぎゅっと握りしめる。
    「――やってみます!」
     セシルの強い眼差しに、ジオット王は頼んだぞと大きく頷いたのだった。

     王の間から退出したセシル達は深刻な表情で悩んでいた。
     最後のクリスタルを死守することに異論はない。だが、根本的かつ大きな問題がひとつあった。移動手段がないのだ。
    「……ファルコンじゃ無理なんだよな?」
    「ああ。無理だ。飛んでる途中でエンジンがいかれて墜落するのがオチだ。試したいのなら、止めんぞ。思う存分行ってこい」
    「ざけんなバカイン。てめぇが落ちろ。……でもよ、それじゃどーすんだ?」
    「だからそれを今考えているというのが分からんのか? オウジサマ」
    「……てめぇに王子言われるとすっげぇ気色悪ぃ……」
    「そうか。ならもっと言ってやろう」
    「やめろボケ!」
     いまいち緊迫感に欠けるカインとエッジの会話内容だが、抱えている問題は深刻だ。
     セシル達は意味もなく城内を歩き回る。疲れているようだからとジオット王は宿を提供してくれたが、移動手段の問題が解決しないこの現状では、落ち着いて休むことも出来なかった。
     歩き回った所で事態が解決するわけでもないのだけれど、と思いながらセシル達は救護室の前を通りかかる。その時、室内から大きな声が威勢のいい声が聞こえたような気がした。
    「……何だろう?」
     救護室という場所に相応しいとは思えない元気のいい声に、セシルは興味をひかれて戸を開ける。すると、そこには。
    「メシはまだか〜っ!? まったく、わしは怪我人なんじゃぞ!? もっと丁重に扱わんかーいっ!!」
     そんなに元気よく叫んでいるのにどこが怪我人なのかと思わず突っ込みたくなるほどに元気な、シドの姿があった。
    「シ、シド……!」
     声が震えるのを抑えられなかった。セシルは転がるようにベッドに駆け寄る。
    「何じゃい! ……ってセシル達か!」
     セシルに続いてベッドに駆け寄ったローザが、瞳を潤ませながらも美しく微笑む。
    「無事だったのね……!」
    「全く……! あれだけ格好をつけておいて!」
     カインが呆れたように息を吐くが、その声に隠しきれない喜色が滲み出ていた。
     瞳を潤ませながらセシル達のとシドの再会を喜ぶリディアの横で、唯一シドと全く面識のないエッジが首を傾げた。
    「誰だ? このじじい」
    「何じゃい、失礼な小僧じゃな! 誰じゃい、こいつ!」
     シドの言葉にエッジは偉そうに胸を張った。
    「俺様こそエブラーナの王子、エッジ様よ!」
     どこか好戦的な様子のエッジを、リディアが涙目のまま睨み付ける。
    「もう! おじちゃんは怪我してるんだから、あんまり怒らせないの!」
     その様子を見ていたシドはおもむろにやりと笑った。
    「何じゃ、もうリディアの尻に敷かれとんのか!」
    「う、うっせー!」
     そうして何やら騒ごうとしたエッジだが、リディアに再び睨まれて言葉を濁らせる。そのやりとりにシドは豪快に笑った後、シドは真剣な表情でセシルを見た。
    「……で? 何がどうなっとる? クリスタルはどうした?」
     セシルは、先程ジオット王にしたようにシドに事情を説明した。黙って聞いていたシドは、話が終わるなりむくりとベッドから起き上がる。
    「フフフ……。わしの出番のようじゃの! わしがいないと何にも出来ないのか、全く……」
     嬉々としてそう言うと、ドワーフの看護師の制止も振り切って駆け出していってしまった。
     シドをよく知るバロンの幼馴染三人組は視線を合わせ、苦笑した。あまりにもシドらしい姿に、安堵と嬉しさを覚えたのだった。

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