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第四話

「……なるほど? 結局、ティオはお酒の勢いであんたに告白したのね? ……うーん、やっぱヘタレはヘタレだったかぁ。……んで? 酔っぱらって倒れて、その後どうなったの?」
「え、ええっと……しばらくしたら、目を覚ましたんだけど……ティオさん、ものすごく慌てふためいて……」
 ウェルチは、その時のことを思い出す。
 ――……うわああああああ、病人のベッド取っちゃってごめんなさい! っていうか、なんか色々ごめんなさいぃぃぃっ!
 そんな風に叫ぶやいなや、ウェルチの家から飛び出していってしまったのだ。
「……それって、かなりヘタレだわね。さすがティオだわ」
 ジーナは呆れたような口調で、そう呟く。そうして、ウェルチの話の先を促した。
「……で?」
「……それから、顔会わせないようにしてた……。この前会っちゃうまでは一回も会ってなかったの」
「……何ですって?」
 訝しげな顔をするジーナに、ウェルチは顔を真っ赤にしながら俯く。
「だ、だってぇぇぇ……。どうすればいいのか分からなかったんだもの……」
「それにしたって……あんたもヘタレね」
「ううっ……」
 返す言葉もない。ウェルチは肩を縮こませる。
「することなんて、分かりきってるじゃないの。告白に対してイエスかノーの返事をする! それだけでしょ?」
「そう、かもしれないけど……。でも、分からないんだもの……」
 ジーナがどういうこと? というように首を傾げる。少し落ち着きを取り戻したウェルチはお茶に口を付けて、小さく息を吐いた。
「わたしが……ティオさんをどう思ってるのか。わたしの気持ちが、分からないの……」
 自分自身の気持ちのことなのに、自分でも情けないと思う。けれど、酔っていたとはいっても彼の気持ちが真剣だったことは、十分に伝わってきた。その気持ちに返せる確固たるものが、ウェルチの中にない。
「……ウェルチはさ、告白されてどう思った?」
 ジーナの問いに、ウェルチはゆっくりと目を伏せ、考えながら言葉を紡ぐ。
「びっくりしたけど……う、嬉しかった、かな?」
「……そう」
「うん。……ティオさんのこと、好きだよ。けれど、この好きがなんなのか、分からなくなっちゃった。告白なんて初めてされたし、それでティオさんのこと考えるとどきどきするのかなって……」
 そう言って肩を落とすウェルチの様子にため息をついたジーナは、身を乗り出すとウェルチの額を人差し指で弾いた。
「ふぎゃっ!? ジジジジーナ!? 痛いよ!?」
「バカねぇ。出てるじゃないの、答え。告白は嬉しいけれど、今は友人として好きなのか、恋していて好きなのか分からないって。……今考えたって、それ以上の答えなんてでないわよ。だってウェルチだもの」
「ウェ、ウェルチだものって……」
 一応そう抗議はしてみるものの、だってそうでしょとあっさり返されれば、何の反論も出来ない。
「ティオだって、ウェルチがそういう子だって知ってるわよ。ずーっと見てたんだもの。それでも、お酒に酔った勢いとはいえ一応、告白してきたんでしょう? どんなに考えてもそれ以上の結論が出ないんなら、今の精一杯を返すのが誠意ってものじゃないの?」
 ウェルチがはっと顔を上げると、ジーナはにっこりと微笑んだ。
「さて、じゃあウェルチ?」
「え?」
「あそこにいるティオと、お話しましょうか!」
「……え?」
 にこにこと笑顔でジーナが指し示す方向に視線を向けると、そこには偶然通りかかったのか、大きな荷物を抱えて歩く、ティオの姿があった。

 

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