INDEX オマケその2

    記憶のうた 番外編:Re:Sweet plan・オマケその1


     犬御殿・猫御殿のある中庭から、楽しそうな少女の笑い声がする。
     ユートはひょいっと犬御殿の中を覗き込むと、へらりといつもの曖昧な笑みを浮かべた。
    「おお、お嬢。いたいた〜」
     満面の笑みで犬に顔を舐められていたリアが、顔を上げる。
    「あ、ユートちゃんだぁ!」
    「むう!」
     リアに抱えられたままのぽちも声を上げる。
    「やっほー。今日は犬御殿?」
    「うん! わんこも可愛いよねぇ〜」
     そう言ってリアが首の辺りを優しく撫でてやれば、犬は甘えたような声をあげた。
    「ふふ〜。いい子いい子〜」
    「お嬢って、動物好きだよねぇ」
    「うん! 大好き!」
     大きく頷いてから、リアはひょこんと首を傾げる。
    「……そういえば、ユートちゃん。どうしたの? いたいたってことは……あたしのこと、探してた?」
    「お、お嬢ナイス推理。名探偵になれるねぇ」
     そう言ってぐりぐりとリアの頭を撫でれば、リアがぷうっと頬を膨らませた。
    「またユートちゃんは適当なこと言って〜」
    「あらま。俺様真剣よ?」
    「どこがよぉ〜」
     楽しそうに笑うリアの頭をぽんぽんと叩き、ユートは持参した袋を差し出した。
    「ほい。お嬢。あげる〜」
    「……ユートちゃん?」
     首を傾げるリアに、ユートはにんまりと笑う。
    「俺様からの愛のプレゼント〜」
    「うえええええ!? ああああ愛!?」
     予想通りにうろたえた声をあげるリアにユートはへらへらと笑みを浮かべたままだ。
    「うん。愛。……バレンタインにお嬢から特大の愛をもらったからねぇ。今日はそのお返しの日だから、俺様も特大の愛をお返ししないと」
    「……え?」
    「ホワイトデーって知らない?」
     その言葉に、リアはぶんぶんと首を横に振った。
    「し、知らなかった」
    「そっか。姐さんが教えてるとばっかり思ってたよ。……そんなわけで、俺様からね」
     リアは幾度か瞬いた後、そっと両手を差し出した。その上に、ユートはぽんと紙袋を乗っける。
    「あ、ありがと。ユートちゃん」
    「いえいえ〜。どーいたしまして」
    「あ、開けていい?」
    「どーぞどーぞ」
     そうして、小さな紙袋を開けたリアの顔がぱっと輝く。
    「リボンだ! 可愛いっ!」
     リアの手にはピンクの布地にレースがついたリボンが三本、入っていた。
    「お、お嬢好み?」
    「うん! こういうの大好き〜っ」
     満面の笑みを浮かべて頷いた後、リアはユートを見て瞬いた。
    「けど……ユートちゃんがこれ、選んだの?」
     こういったリボンは可愛らしい小物を扱ってるようなお店でなければ手に入らないはずだ。可愛らしいお店に入るユートを想像するのは難しい。
    「もっちろ〜ん。かわいーお嬢のためですから〜」
     へらへらした顔で言われても説得力の欠片もないのだが。
     まあいいや、とリアは頷いた。細かいことを気にしても仕方がない。嬉しいのだから、それでいいじゃないか、と思う。
    「えへへ。嬉しいなぁ。……でも、三本?」
    「うん。一本はね……」
     ユートはリアの手から一本だけリボンを取ると、それをしゅるりとぽちに巻いた。
    「お嬢の大切な相棒の、くまっちに」
     やっぱりぽちの呼び名が安定しないユートに、リアは満面の笑みを向けた。
    「ありがとうっ! ユートちゃん!!」

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