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    FINAL FANTASY W 〜地底世界で・7〜

     バブイルの塔に辿り着いたのは、ドワーフの城を出てから二日と半日ばかりが過ぎた頃だった。
     ここまで近づいてしまうと、塔の上部は見上げても視界にはいらない。天井付近はマグマの明かりも届かないため暗く、この塔が地面を貫通しているのかどうかの真偽を定めることは出来そうになかった。
     セシル達の到着と同時に、ドワーフ戦車隊が本日幾度目かのバブイルの塔への砲撃を開始する。着弾するたびに激しく地面が振動した。そうして敵をひきつけている間に、セシル達は塔内に潜入することに成功した。
    「……こ、れは……」
     そうして入った塔の内部の光景に、リディアを除く仲間達の目が丸くなる。
     無機質な材質で造られた異質の塔。既視感を覚えるな、というほうが無理な話だ。
    「みんな、どうしたの?」
    「……ゾットの塔に、そっくりなんだ……」
     様子のおかしいセシル達に、リディアがひょこんと首を傾げる。セシルが何とかそう答えたが、ゾットの塔を知らないリディアはさらに不思議そうな顔をした。
    「ゾットの塔?」
    「……私が捕まっていた場所よ。そこも……こんな風に未知の技術が使われていたの」
     ローザの言葉にリディアはふうんと呟いて、床に視線を落とす。石でもレンガでもない、セシル達の知識にはない硬質な物質で作られた床は、時折淡い光を放っている。
     その光を受けて、リディアは翡翠の瞳を瞬かせる。
    「……何なのかな、これ。幻界でもこんなの見たことない」
     セシルはふと顔を上げてカインを見やるが、カインは小さく首を横に振った。
     カインもゾットの塔については何も知らないらしい。
     ここまで構造や印象が似ているならば、ゾットの塔もバブイルの塔も同じ人物が建設に関わったに違いない。だが、二つの塔の目的が何なのか、そもそも何の目的で建てられたのか。謎は深まるばかりだ。
    「……考えていても仕方ないだろう。いくぞ」
     カインの言葉に、セシルは頷く。
     セシル達の使命は、この塔の謎を解くことではない。クリスタルを奪還することだ。この塔の謎がゴルベーザの今までの行動の理由に繋がることは確かだが、全てはクリスタルを取り戻してからだ。
     ふと、床をじーっと見つめていたリディアが顔を上げる。
    「……ゴルベーザの気配は……しないね」
    「うむ。確かに。……だが、別の威圧感がある。……かなりの使い手だ」
     召喚士であり黒魔道士であるが故に気配に鋭いリディアと、修行を積んだモンク僧故に敵の気配に敏感なヤンが、固い声音でそう呟く。
    「……ゴルベーザは、ドワーフの城での戦いで重傷を負ったわ。当分は出てこないんじゃないかしら。問題は、別の威圧感の正体ね」
     考え込んでから慎重に口を開いたローザが、天井を見据えて目を細めた。
    「恐らく、ゴルベーザ四天王・火のルビカンテだろう。ゴルベーザが負傷している今、この塔を任せられるのはヤツしかおるまい」
     そう言ったカインは、だが腑に落ちない様子で辺りを見回す。
    「だが……おかしいな。ヤツ配下の者の姿が見えん……」
     言われて、セシルははっと周囲を見回した。
     確かにそうだ。塔全体から魔物の気配は漂ってはいるものの、ゴルベーザ配下の兵の姿は全く見当たらない。
     いくら主力をドワーフ戦車隊が引き付けてくれているとはいえ、これはおかしい。ここにはクリスタルがあるはずなのだ。それなのにそれを警備する要員すらいないなんて。
     だが、塔の謎同様悩んでいても仕方がないのも事実だ。セシルが悩んだところで、答えが出るはずもない。
    「みんな。当然だけど、気を引き締めて。相手が何を企んでいるのか読めない。慎重にいこう」
     セシルの言葉に、仲間全員が頷き。そうして、未知の塔内を歩き出した。

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