BACK INDEX NEXT

    FINAL FANTASY W 〜地底世界で・1〜

     結論から述べれば、カインに渡された黒い石は確かに地底世界への鍵だった。
     エブラーナとミシディアのちょうど中間の辺りに位置する小島にある村・アガルト。
     ドワーフの子孫を名乗る村民の存在や、「この世界には表と裏が存在する」という伝承が伝わっていることから、セシル達はこの村に地底世界の入口に関する手がかりを期待していた。
     そうして聞き込みを行った結果、村の中央の枯れ井戸に辿り着いた。
     底が見えぬほど深い井戸。井戸としての役割を果たしたことはないらしい。
     セシル達も井戸を覗き込んでみたが、真っ暗で底は見えない。ヤンが試しに石を投げ入れてみる。これならば、石が底に当たれば何かしらの音が返ってくるはずである。
    「…………」
    「…………」
     しばらく待っても、何の音もしなかった。
    「……小さな音も聞こえないほど深いのか……あるいは底なしか……」
     さすがに引き攣った笑みを浮かべるカインの横で乾いた笑いを浮かべていたセシルだが、ふとあの黒い石が微かに熱を持っていることに気付いた。今までこんなことは一度もなかったというのに。まるで、何かに反応しているかのようだ。
    「……熱い?」
     懐にしまっていた石を取り出して、首を傾げる。その呟きに、このパーティーの中で一番好奇心旺盛なシドが近付いて来た。
    「んー? どれどれ。ワシに見せてみろ」
     そう言ってセシルの手から石を取り上げたシドは。
    「っっあっつぅぅぅっ!!」
     石を思いっきり放り投げた。
    「あ」
     シドのあまりの行動に、セシルもカインもヤンも石の軌跡を見守ってしまった。石は綺麗な放物線を描いて落ちた。――井戸の中に。
    「……あー……」
     本来なら慌てるべきなのだろうが、何となく事態を見守ってしまったため、他に言葉が出てこない。さて、どうしようと困惑した、その時だった。
     激しい地鳴りともに、村の奥に聳え立つ山の頂上から、火柱が立ち上がったのだ。
     遠く、村人たちがざわめく声が聞こえる。
     それにしても、タイミングといい、現象といい。
    「わ、ワシのせいかっ!?」
     石の熱さのせいでまだひりひりするらしい手を振りながら、シドが慌てたように叫ぶ。その隣で、囚われて以来妙に肝の据わってしまったローザが、場にそぐわない綺麗な笑みを浮かべた。
    「あら? でもこれで地底に行けるじゃない」
    「え?」
    「だって、今の爆発で大穴が開いたに決まっているもの」
     どこか楽しげにそう言って、ローザは山を指差したのだった。

    「凄い! ……溶岩の海、ですな……!」
     エンタープライズで山に開いた大穴から地底世界に降り立った一行がまず目にしたのは、一面に広がるマグマの海と、赤黒い岩の大地だった。
    「……人が住める環境なのかしら?」
     上空にいても痛いほどに感じる熱気に、ローザが形の良い眉をしかめて呟く。
     確かに、この環境では人が生きていくには厳しすぎるだろう。果たして、この世界のどこに闇のクリスタルがあるというのか。
     その時、船首部分で前方の様子を窺っていたカインが声を張り上げた。
    「見ろ!! 何かが戦っている!!」
     その声に一同はそちらを一斉に見て、目を丸くした。見覚えのある飛空艇団と戦車隊が爆撃戦を繰り広げていた。
    「あれは……赤き翼!?」
    「戦っているのは、誰だ!?」
     セシルとカインが口々に叫んだ。その間にもエンタープライズはどんどんと戦場に突き進んでいく。このままの進路で行けば、爆撃に突入してしまう。だが、エンタープライズの装甲では、マグマの上は飛べないのだ。熱で、あっさりとエンジンがいかれてしまうだろう。
     シドが、小さく舌打ちした。
    「突入する! 全員しっかりと掴まっとれよ!!」
     その言葉に全員が体勢を低くし、柱やロープなどにしがみつく。ほぼ同時に、強い爆風がエンタープライズを襲った。
    「痛いか!? エンタープライズ! もう少し、耐えとくれ……!」
     飛空艇をまるで我が子のように扱うシドの声が、爆風の中でも妙に鮮明に響いた。
    「……くっ!? いかん、エンジンがもたん!! ……不時着する!!」
     そして、大きな衝撃がセシル達を襲い、セシルは意識を手放していた。

    BACK INDEX NEXT

    Designed by TENKIYA
    inserted by FC2 system