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    FINAL FANTASY W 〜試練の旅路・6〜


     パロムとポロムは同時に目を伏せた。完全に隙だらけの姿だが、スカルミリョーネが何事か仕掛けてくる様子はない。だからこそ心置きなく神経を研ぎ澄ませ、魔力を高める。そうすれば、お互いの存在を強く感じた。心に抱くのは同じ思い。心を同調させ、魔力の波長を合わせなければこの魔法は発動しない。
     そして、試練の山に完璧なユニゾンが朗々と響く。
    「「天を翔けるもの! 星空を流浪する小さき無数の欠片たちよ!」」
     聞いたことのない詠唱に、テラが眉をしかめた。
    「……何じゃ? この呪文は……」
     小さな呟きに、賢者と呼ばれる者でも知らない魔法があるのかと、セシルは内心思いつつ、重い頭を動かして双子を見つめる。
     その視線の先でスカルミリョーネも微かに顔をしかめているようだから、彼も知らない魔法なのだろう。
    「「我らが魔力の輝きに応えよ! 我らが魔力を導にこの地に来たりて、彼の者に降り注げ!!」」
     パロムとポロムが同時に目を見開き、叫んだ。
    「「プチメテオ!!」」
     双子を中心に、凄まじい魔力が爆発した。同時に宙から無数の星の欠片がスカルミリョーネに降り注ぐ。
    「メテオ!? ……違う、これは……!」
    「……すごい」
     ようやく半身を起こしたセシルとどこか呆然としたテラが見守る中、パロムとポロムの魔法を受けたスカルミリョーネの身体が傾いだ。その身体が傾いた方向にあるのは、スカルミリョーネがセシル達を落とすと言っていたあの崖だ。
    「お……のれ……。この、私が……貴様ら、ごとき、にぃ……。グ……パァー!」
     スカルミリョーネのぼろぼろになった身体が、崖から落ちる。今度こそ、スカルミリョーネの最期のはずだ。
     魔力の消費が激しいのだろう、パロムとパロムは肩で息を繰り返していたが、スカルミリョーネが倒れたことを見届けると、同時に背後を振り返った。その動きの見事なシンクロ具合に、セシルは思わず微笑を零す。
     振り返った双子は、上半身を起こしたセシルを凝視してしばらく硬直していたが。
    「あんちゃん!」
    「セシルさん!」
     ほとんど同時に飛びついてくる二人を、セシルは穏やかに受け止める。
    「あんちゃん……! ごめんよ、オイラ……!」
     パロムが表情を歪めると、ポロムがぽろぽろと涙を零した。
    「セシルさん……良かった……!」
     それ以上言葉にならない二人の頭をセシルは優しく撫でる。
     柔らかく温かな体温と感触は久々でこの二人にこのような行動をするのは初めてかもしれない、と思い至った。リディアの頭はよく撫でていたのだが。
    「もう、大丈夫だから。心配かけて、すまない」
     そう言っても全く泣き止む気配のない二人に、セシルは困ったな、と苦笑して二人を抱きかかえると、そのまま立ち上がった。テラの治療は完璧で、すでにふらつくこともない。
    「うぅわっ!?」
    「きゃあっ!?」
     反射的にセシルの肩にしがみつく二人を抱きかかえたまま、セシルは歩き出した。
    「セ、セシルさん! お身体に障りますっ!」
    「そうだよっ! あんちゃん、怪我人だろ!?」
     慌てふためく二人に、セシルは穏やかな笑みを零した。
    「大丈夫。テラの回復魔法で治してもらったし。それに、そんなやわな鍛え方はしてないよ?」
     その言葉に、パロムとポロムは微かな安堵の表情を見せるが、それでも納得したような様子はない。セシルは小さく苦笑した。
    「二人にはここに来るまでも、今もたくさん助けてもらったからね。恩返ししないと」
     そう言えば、ようやく双子は微かな笑みを見せた。
    「……それにしても、すごかったね。さっきの。……あれは何だい?」
     その問いかけに、途端にパロムが胸を張った。
    「へへ! ふたりがけさ!」
    「魔力と精神の波長を合わせて使う魔法ですわ」
    「へえ……。何かすごいね。びっくりしたよ」
     そんな会話をするセシル達を、テラは微笑ましいものを見るような目で見ていたが、ややあって視線を試練の山の山頂に移す。
     頂上にひっそりと建つ小さな祠。そこからすさまじい力を感じた。痛いほどの神聖な力だ。
     セシルもそれを感じたらしい。穏やかな笑みを消すとすっと表情を引き締めた。それを見たパロムとポロムも表情を真剣なものに変え、パロムが降ろせと言うようにセシルの胸を軽く叩く。今度はセシルも何も言うことなく、双子をそっと地面に降ろした。
    「……すごい力……」
    「ああ……。震えるくらいだ……」
     双子の言葉に、セシルはテラを振り返ると、テラは大きく頷いた。
    「目的地は、あそこのようじゃな」
     セシルは小さく息を呑んだ。緊張のせいだろうか、唇が乾いている。セシルは一度唇を舐めるようにして湿らせると、仲間たちを見回した。
    「……行こう!」
     その言葉に、魔道士達は同時に頷いたのだった。  

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