「……おいおい……」
もうもうと砂埃が舞う中で、エッジは口元を引きつらせた。
「冗談じゃねーっつの。なんつー威力だよ……」
バハムートの口元から放たれた光は、エッジ達が立っている辺りの地面を深く抉っている。リフレクがなければ、無事ではすまなかっただろう。
「……フレアが、全体攻撃になったみたいな攻撃だったわね」
ローザが固い表情でそう呟く。まさしく、そんな印象の攻撃だった。
「……次の攻撃までに、倒さないと」
セシルも険しい表情で呟く。手持ちの道具に光のカーテンも月のカーテンももうない。次の攻撃までに全員のリフレクが切れてしまったら、セシル達の負けが確定してしまう。
「だよな。こんな攻撃直撃したら、マジやべーぜっ!」
言いながら、エッジがバハムートに向って手裏剣を投げる。
「分かってるなら、どんどん攻撃をするんだなっ!」
エッジにそう言いながら、カインが槍を構えて高く飛びあがった。
「へっ! 言われるまでもねーっての!」
鼻で笑ったエッジが、忍刀を構えつつ地面を蹴る。それに僅かに遅れて、セシルも剣を構えて駆け出した。
「――……バーサク!!」
ローザがバーサクをエッジに放つ。エッジの身体を淡いオレンジ色の光が包み、そのスピードがさらに増した。
「おおおおおっ!!」
バーサクによって狂戦士と化したエッジが、連続でバハムートに切り付ける。その間隙を縫うように、槍を構えたカインがバハムートに重い一撃を浴びせた。
バハムートが高く嘶く。
「一回目っ……!」
セシルは小さく呟きつつ、渾身の力でバハムートに斬りかかった。この咆哮を五回聞いてしまえば、一巻の終わりだ。
「……果てなき宙を駆けゆくもの、永遠を彷徨う放浪者よ……」
やや低い声音の、リディアの詠唱が響く。その呪文に、セシルは微かに聞き覚えがあった。
「……メテオ」
最強の黒魔法。リディアはこの一撃に賭けているようだ。
「……っバーサク!!」
ローザが再度バーサクを放ち、セシルを狂戦士化させる。それと同時に、カインが再び地面を蹴った。
「我、ここに汝の力を示さん。我が声に応えよ、我が魔力の輝きに応えよ」
狂戦士化したセシルの一撃が、バハムートの腹を深く薙ぐ。そうしてセシルが間合いを取ると、その穴を埋めるかのようにエッジがセシルとまったく同じ個所に斬りつけた。
「――……我が魔力を導にこの地に来たりて……」
カインがバハムートの頭上から攻撃を加え、バハムートが二度目の咆哮を上げた瞬間、リディアを中心に、強力な魔力が渦巻いた。そして。
「……彼の者へと降り注げ!! ――……メテオ!!」
リディアの魔法が発動する。空間を歪めて出現した無数の隕石が、バハムートへと降り注ぐ。
そして、隕石が収まると、そこには。人の形を取ったバハムートの姿があった。
「あなたたちの力と精神、確かに受け止めた。……リディアよ。あなたが私を必要とした時、唱えるのです。バハムート、と……!」
その言葉に、リディアの顔がぱあっと輝いた。
「はい! ありがとうございます!! 幻獣神様!!」
その光景を見て、セシル達は安堵に大きく息をついたのだった。