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    FINAL FANTASY W 〜幻獣を統べるもの・2〜

     長い階段を上り、薄い金髪の青年の前で、セシル達は立ち止まる。
     そして、リディアが一歩だけセシル達より前に出た。
    「……幻獣神様……」
    「リヴァイアサンを味方につけたか……」
     男性とも女性ともつかない、低いけれど穏やかな声。男性特有の骨ばった体格はしているものの、面立ちは女性のようにも見える。何だか不思議な印象の青年だとセシルは思う。
    「だが、そこまでは光の力がなくても出来ること。……そなたたちに真の光の力が宿っているか……」
     ばさりとローブをはためかせ、青年は口角を上げた。
    「最後の審判は、この幻獣神バハムートが下す」
     リディアは低く身構えながら、口を開く。
    「幻獣神様……あなたに、認めさせてみせます! あたしの――あたし達の力を!」
     その言葉に、青年の笑みが深くなる。そして、光が青年を包み込み――見上げるほどに大きなドラゴンが、その場に現れる。
     幻獣神の名に相応しい覇気に、セシルは小さく息を呑んだ。
    バハムートが高く嘶くと、空気がびりびりと震える。
    「……すげぇ迫力だな、おい」
     苦笑いを浮かべつつ忍刀を引き抜いたエッジが呟き、たんっと地面を蹴る。そうして、バハムートに切りかかった。
    「……なにか、攻略法が分かればいいのだけれど」
     油断なくバハムートを見据えながら、ローザがぽつりと呟く。
    「確かにな。……リディア、何か知らないか?」
     ローザの言葉に同意したカインが、槍を構えつつリディアを見た。
    「バハムートの……攻略法……」
     ぽつりと呟き、リディアが考え込む。エッジが間合いを取ったのを見たカインは、続けざまにバハムートに鋭い突きの一撃を浴びせる。
    「――……バイオ!」
     リディアはバイオを放ちつつも、頭の片隅で記憶を手繰っていた。
     そんな記述を本で読んだような記憶はない。けれど、いつか誰かと、月にいるという幻獣神の話をしたことがあった気がする。
     ――月には、我らが幻獣の神が住んでおられるのですよ。
     何かお話ししてとせがむ小さなリディアの頭を撫でながら、そんな話をしてくれたのは。
    「……王妃様だ……」
     ひとつ思い出せば、芋づる式に記憶がよみがえっていく。
    「……リディア?」
     問いかけるローザを見て、リディアは呟く。
    「昔、王妃様に、聞いたことがあったの。……幻獣神様は、あたしに力を貸してくれるかな? って」
     ――もし、幻獣神様にお会い出来たら、幻獣神様は力を貸してくれるのかなぁ?
     そんな他愛もない問いかけに、王妃は笑う。
     ――そのためには、まずは私や幻獣王に認められなければならないのですよ。幻獣神様は、王が認めない者にはお会いにならないでしょうから。
     ――そうなの?
     ――そうなのですよ。でも……そうですね。もし、幻獣神様にお会いして、力をお借りするなら……。幻獣神様の試練を乗り越えなければなりません。……でも、私に認められたなら大丈夫ですよ。
     王妃の言葉の意味が分からなくて、不思議そうに首を傾げるリディアに、王妃は意味ありげな微笑を浮かべた。
     ――王に認めるほどの光の力と、私が認めるほどの知恵があれば、大丈夫です。……その前に、どうやって月に行くのかの方が難しいのではないのですか? リディア。
     ――あっ、本当だ!
     そんな会話をした覚えがある。
    「そしたら、私に認められたのなら大丈夫だって。私が認めるほどの知恵があれば大丈夫だって。……そう言ってたの」
    「王妃様が、そんなことを?」
     視線はバハムートに向けつつも話を聞いていたセシルの問いかけに、リディアは頷いた。
    「うん」
     そして、考え込む。知恵があれば大丈夫と言っていたが、それは頭を使って戦えということだろうか。でも、それも何だかしっくりこない。
     そもそもバハムートの特性が分からなければ、頭を使い工夫して戦うことも出来ない。そこまで考えて、リディアはふと顔を上げる。
    「……あ! 分かったぁ!」
     それと同時に、バハムートが二度目の咆哮をあげたのだった。

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