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    FINAL FANTASY W 〜幻獣を統べるもの・1〜

     月の民の館に続く道と同じような、地下通路。だというのに、今歩いている洞窟は、地下通路とは空気がまるで違う。荘厳な気配に、身が引き締まるような思いがする。
     それはきっと、この洞窟の奥に幻獣神がいるからなのだろう。
     セシルが頭の片隅でそんなことを考えつつ歩いているのは、幻獣神がいるという洞窟だ。
     急いでゼムスのところに向かわなくてはならないが、同時にセシル達は少しでも強くならなければならない。そこで、幻獣神に助力を願おうと、ここまでやって来たのである。
     周りの気配に気を配りながら歩いていると、通路を塞ぐようにしている魔物の姿が見える。紫色の巨大な獣の姿に、エッジが心底嫌そうな顔をした。
    「またあのデカブツかよ〜。……何回目だ!?」
    「三回目だな」
     槍を握り直しつつ、カインが呟く。目の前の魔物はかなり強力な魔物で、はじめて戦った時は相当苦戦したものだ。
    「ええっと、黒魔法と白魔法はダメだよね。ミールストームの反撃があるもの」
     確認するようにリディアが言う。ちなみに召喚魔法は反撃を受けないが、あの魔物はほとんどすべての属性魔法の威力を半減化させる能力があるからやっかいだ。
    「そうね。上手い対処法があればいいのだけれど……」
     ローザが考え込む。白魔法は回復に徹すれば問題はないが、無属性魔法であるバイオやフレアが使えないのは痛い。
    「そうだよね。……ミールストームは脅威だけど、それだけで全滅することはないから……。攻撃をされる前に回復できればいいんだけど……」
     セシルの呟きに、あっとリディアが声を上げる。
    「じゃあ、ブリンクを使えばいいんじゃない? それで、攻撃が回避できるもの!」
     ブリンクは物理攻撃を二回、回避できるようになる支援系の白魔法だ。
    「いんじゃね? 俺は分身の術が使えるし、スケープドールだって何個かあったろ?」
     セシルは道具袋の中身を思い出しながら、頷く。
    「そうだね。その作戦、いいかもしれない。それでいこう」
     そして、セシルは剣を引き抜く。魔物も、こちらの気配に気づいたらしい。体勢を低くし身構えている。
     それを見たリディアが慌てたように、スケープドールを三つ取り出した。
    「よし、じゃあみんな準備はいいね? ……いくよっ!」
     そう叫んで一歩踏み出すと、魔物が低く唸り声を上げる。そうして、戦闘が始まった。

    「……いっやぁ〜。快勝、快勝! 作戦がああもばっちし決まるとはな〜っ」
     エッジがうーんと伸びをしながら笑う。
    「本当だね。やっぱり、フレアが使えたのは大きいね」
     セシルがこくんと頷いた。
     全員に魔法や忍術、道具でブリンクをかけた後、リディアはフレアで攻撃。ミールストームの反撃を受けたら、ローザが即座に白魔法で回復。回復までのわずかな時間に物理攻撃を受けても、ブリンクの効果があるうちはダメージを受けることもない。
     その作戦が見事にハマり、ほとんど苦戦することなく勝利することが出来たのだ。
    「浮かれるのはいいけどな、王子様。……気を抜くには早いんじゃないか?」
     カインにそう言われてむっとしたような表情になったエッジだが、カインの視線の先を追って、黙り込む。
     カインの見つめる先には人工的に作られた、石造りの階段がある。
     階段の横には一人ずつ、少年と少女が控え、昇った先はまるで玉座のようだ。そして、そこに薄い金髪の男の姿があった。
     それなりには距離があるというのに、かなりの威圧感を感じる。
    「……あの人が、幻獣神」
     ローザがぽつりと呟く。セシルはすうっと息を吸うと、全員を振り返った。
    「……よし。じゃあみんな、いこう」

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