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    FINAL FANTASY W 〜二度目の悪夢・6〜

     エッジは、部屋に姿のなかった少女を探して、ドワーフの城の中を歩いていた。そんなに広い城ではないからしばらくうろつくだけで、目的の少女の姿を見つけることが出来た。
     人通りの少ない静かな場所に、リディアは一人佇んでいた。その横顔からは、いつも見せるような幼さやあどけなさは感じられず、神秘的な雰囲気すら漂っている。
     ふと、リディアが俯き気味だった顔を上げた。
    「あれ? エッジだ」
     気配に気付いたのだろう。そう言ってこちらを振り返った瞬間、リディアがまとっていた神秘的な雰囲気はあっという間に霧散してしまった。それを少しだけ惜しく思いながら、エッジはリディアに近づく。
    「よーう」
     やや元気がない様子のリディアだが、その原因は考えるまでもないので、エッジはそのことには触れなかった。リディアが小さく首を傾げる。
    「どうしたの? お散歩?」
    「あー、そんなとこかな」
     リディアを探していたとは口にせず、エッジはリディアの横に並んだ。そうして、二人の間に沈黙が落ちる。けれど、リディアが何かを話そうとしてはためらっているのが見て取れたので、エッジは待つことにした。
    「……エッジは……」
     かなりの間を置いて、リディアがゆっくりと口を開く。
    「もし、カインが戻ってきたら……許せる?」
     躊躇いがちなリディアの問いに、エッジは即答した。
    「許さねぇな。……あいつ、裏切るの二度目なんだろ? お前らの口ぶりからして」
    「……うん」
     リディアが項垂れる。エッジはがしがしと頭を掻きながら言葉を続ける。
    「そうなると許す許さねぇの問題じゃない気もすっけどな。二回も裏切った奴に背中を預けて戦えるかっての。それは許せば何とかなるような問題じゃねーからな。……ま、あいつもそんな簡単に許されたいとは思わないんじゃないかと思うけどな」
    「……そう、だね」
     そこでふとエッジは考え込む。
    「……それでも、一緒に戦うとしたら……。それは、俺があいつの覚悟を認めた時だけだろうな」
     その言葉に、リディアは数度瞬く。
    「覚悟? どんな?」
    「それはその時になってみねーと分かんねーよ」
     肩を竦めてみせるエッジに、リディアは小さく頷いた。
    「……そっか。ねえ、じゃあエッジは、カインのことどう思う?」
     そのリディアの問いにも、エッジの答えは決まっている。
    「バカだ、バカ。あいつバカのくせに散々俺のことバカ扱いしやがって何なんだよ、あんのアホ竜騎士!」
     思わず黙り込むリディアに、エッジは言葉を続ける。
    「勝手に一人で抱え込んで悩んで、挙句の果てに敵に操られてんだぞ。バカ以外の何ものでもねーだろ。……まぁ、理由が理由だってのはあるかもだけどな。けど、操られるくらい鬱憤たまってんなら、いっそ吐き出しちまえばよかったんだよなー。親友なんだしよー」
    「……エッジは、カインがローザを好きだって知ってるんだね」
    「バレバレだろ。分かってねーのは当のローザ本人くらいだろ。……不憫だな、カインちゃん」
     改めて言葉にしてみると、カインの気持ちも分からなくはない。それにしたって、カインはもう少しセシルやローザと話すべきだったのだろうけれど。
    「リディアは、カインのことどう思ってるんだよ?」
    「どうって……」
     リディアは小さくそう呟くと、考え込んでしまう。即答があるものだとばかり思っていたエッジは、リディアの反応に驚いた。
    「うーん……。エッジに聞いておいてなんだけど……難しいなぁ」
     そう言ってリディアは首を傾げて苦笑する。その笑顔はどこか悲しそうだ。
    「……何で? お前なら、好きだよ〜とか言うのかと思ってた」
     リディアの母やミストのことでバロンに対して思うところはあるだろう。けれど、リディアは優しく、聡明だ。国と個人を混同することはないだろうと、エッジは知っている。
    「うん、そうだね。お兄ちゃんみたいで好きよ、カインのこと。セシルのことも、そう思ってる。……でもね」
     そこでリディアは一度言葉を切った。酷く緊張し始めたリディアの様子が伝わってきて、エッジは無意識に息を呑んでいた。
    「それだけじゃ、ないの。二人が真面目で、優しい人だって知ってる。好きだって思う。……けど、それ以外にも色々思うことがあって……」
     リディアは再び押し黙ってしまう。何かを言いたそうな気配に、エッジはリディアの頭を柔らかく撫でた。
    「リディア、言いたいことがあるなら、ちゃんと言え。……聞くから」
     顔を上げたリディアの瞳には怯えに似たような色が見えた。
    「あの、ね……。信じてもらえるか、分からないんだけど……。聞いて、くれる?」
     やや震えてはいるものの、真剣な声音で、リディアは語りだした。
    「半年くらい前のこと。……あたしにとっての、昔話」 

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