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    FINAL FANTASY W 〜想いの行方・4〜

     シルフの洞窟を後にした一行は封印の洞窟がまだ破られていないことを確認すると、再度ファルコンに乗り込むと別の場所へと移動した。
     溶岩の海に浮かぶ小島。そこにある幻界へと続く洞窟が次の目的地だ。
     きっかけはシルフの洞窟から封印の洞窟に向かう途中で、近くに幻界へと続く洞窟があるというリディアの言葉だった。
     幻界に行って幻獣王に会えば力を貸してもらえるかもしれないとの話に、封印の洞窟に行く前に幻獣王の力を借りられるならこれほど心強いことはないということになったのだ。
     封印の洞窟の攻略を開始すれば、ゴルベーザとの全面対決の可能性が高い。その前に戦力を強化できるならばしておくべきだというのが、全員で話し合った末の結論だった。
    そういったいきさつで、セシル達は幻界へと続く洞窟を進むことになったのである。

    「……事情がよく分からねーんだけどよ」
     マグマの光で赤く照らされた洞窟の最奥。幻界への入り口がある部屋でエッジがぽつりと口を開く。隣に立っていたリディアは、エッジを見上げると首を傾げた。
    「なぁに?」
    「今までの話からすると……要するに、おめぇ幻界にいたことがあるのか?」
     エッジの疑問に、リディアはあっと声を上げた。何だかもうエッジには打ち明けたような気でいたが、そういえば話していなかった。
    「うん、そうなの。旅の途中で海に落ちちゃってね、リヴァイアサンに飲み込まれてここに来たの。それで、ここで過ごしてたんだぁ」
     かいつまんで事情を話す。詳細を語ることはできなかった。すべてを語った時、エッジがどんな反応をするのかと思うと、怖くて話せそうにない。
    「へぇ……。そんなことがあったのか……」
     エッジは納得したように頷くと、それ以上突っ込んで聞いてはこなかった。もしかしたら、リディアの微妙な雰囲気を感じ取ったのかもしれない。
     そのことに安心したような、けれどもっと聞いてほしいような複雑な気分になったリディアは、小さく眉をよせた。
     自分の心だというのに、よく分からない。それはとても不思議な感覚だ。
    「……リディア? どうしたんだい?」
     リディアの表情を見てセシルが心配そうに声をかける。
    「ううん、何でもないよ!」
     心配をかけたくなかったし、何があったわけでもないのでそう言ったのだが、セシルはなおも心配そうだ。
    「本当に? リディア、ここのところ元気がなかったみたいだったから……」
     気づかれていたとは思わなくて、リディアは小さく息を呑んだ。
     けれど、少し考えれば気付かれても当然だったかもしれない。リディアは目に見えて元気がなかったし、セシル達はいつもリディアのことを気にかけてくれているのだから。
     こんな風に気にかけてくれる人がいるということは、すごくすごく幸せなことだ。
     リディアはふわりと笑った。
    「……ごめんね、本当に大丈夫。あたし、元気だよ」
     リディアのその表情に安心したらしい。セシルも笑顔を返す。
    「そっか。リディアが元気ならいいんだ」
    「ありがとう、セシル」
     そう言うと、セシルがふわりとリディアの髪を撫でる。
    「せっかく幻界に行くんだから、リディアの元気な顔を幻界のみんなにも見せないとね。……リディアが元気ないときっとみんなが心配するよ」
     その言葉に、リディアは幻界での生活を思い出し小さく笑った。
     幻獣たちはリディアをとても大事にしてくれていたから、確かにセシルの言うとおりかもしれない。
    「そうだね。……みんな、元気かなぁ」
    「それも確かめないとね。……じゃあみんな、行こうか」
     セシルの言葉に、仲間達が頷く。リディアを先頭に、一行は幻界への入り口に足を踏み入れると、景色が一変した。
    「……町だわ……」
     ローザがほうっと小さく息を吐く。声には出さないが、セシルやカイン、エッジも驚いているようだ。
     それもそうだろう。マグマの洞窟を抜けた先に街並みが広がっているとは思ってもみなかったに違いない。
    「みんな、こっち!」
     セシル達を案内しようと歩き出したリディアの腰のあたりに、黒い塊がぶつかった。
    「きゃぁ!?」
    「リディアー! おかえりおかえりおかえりーっ!!」
     黒いローブを身にまとった幻獣の子どもにリディアは笑みをこぼす。
    「ただいま! 元気だった?」
    「うん! もちろん! ボク、みんなにリディアが帰って来たって伝えてくる!!」
     そう言うなり、子どもは踵を返すとものすごい速さで走っていってしまう。
     ローザが首を傾げた。
    「……今の子は……幻獣?」
    「うん! 幻獣の子どもだよ! すごく懐いてくれてるんだぁ」
     リディアはそう言ってとても嬉しそうに笑った。
    「じゃあ、みんな行こう!」
     リディアを先頭に、セシル達はその不思議な街を歩きだしたのだった。

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