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    FINAL FANTASY W 〜ふれあう心・6〜

     エッジの背に回した腕に力を込めると、肩に雫が落ちたような気がした。
     涙を流しているのかは、リディアからは見えない。それでもエッジの心が泣いているのを感じた。
     リディアはゆっくりと目を閉じる。蒸し暑い中ではあるけれど、エッジの体温が心地よかった。そうしていると、少しだけ心が軽くなる。
     セシル達にも言えないことを吐き出したせいかもしれないし、エッジの言葉に前を向く力をもらったせいかもしれない。
     炎に対する恐怖感は消えてはいない。けれど、エッジがリディアの恐怖心に気付いてくれたことを知って安堵している自分がいる。気にかけてくれる人がいるというだけで、少しだけ心を強く持てるような気がするのだ。
     ふと、リディアは目を開けた。
     エッジは、リディアの過去を知らない。セシルやカインがリディアの母の仇だということも、リディアが幻界で十年近い時を過ごしたが地上では三か月しか時間が経っていなかったことも。
     それらを話す時が来るだろうか。そして、話したらこの人はどんな顔をするだろう。今のように受け止めて、受け入れてくれるだろうか。
     あるかも分からない未来の話なのに、考えると不安になる。
     思わずエッジに強くしがみつくと、エッジがリディアの背中を優しく叩いた。何を言葉にしたわけでもないのに察してくれるエッジに、リディアはほっと安堵の息をついた。
     エッジはリディアの恐怖を見逃さないでくれた。不安に気付いてくれた。最初に会った時は大人のくせに子供みたいだと思ったけれど、それは誤りだったのだと今は思う。
     リディアは再び目を閉じて、エッジの胸に頬を押し付けた。
     エッジがアタシを助けてくれたみたいに、あたしもエッジを助けてあげられたらいいのに。
     ふと、そんなことを思う。エッジはリディアに命を救われたというけれど、それだけじゃ足りないほど、エッジに助けられている。
     助けられるだけじゃ嫌だと思う。対等でいたいと強く願った。
     エッジの低い心音が響く。規則正しいその音は、優しく穏やかで。リディアは居心地の良さに身を委ねていった。

    「……って寝んのかよ、おめーはよ……」
     エッジは呆れ気味の苦笑を浮かべて、自分の腕の中で小さな寝息をたてる少女を見下ろした。その眼差しがひどく優しいことに、エッジ自身も気付いてはいない。
    「……っんとに、ガキだなぁ」
     呟きつつも、リディアを抱き上げる動きは慎重だ。起こさないようにそっと横抱きにすると、改めてリディアの寝顔を見つめる。その表情はあどけなく安心しきっている。
    「……いや、それもどうよ」
     ここまで安心しきっているということは、エッジのことを相当信頼してくれたということだろう。しかし、同時に男としては見られていないということではないだろうか。
     この体勢で安心されてもエッジとしては非常に困るのだが。
     エッジは物凄く複雑そうな表情をしつつも、ゆっくりと歩き出す。
     腕の中で眠るこの少女は酷くアンバランスな少女だと思う。ぐっと大人びた表情をしたかと思えば、純粋な子供の顔を見せる。
     その純粋さに命と心を救われ、そして強く惹かれた身としては文句をつけるはずもないが、不思議な育ち方をしたものだ。
     ミストは人里離れた場所にあったという。隔絶された場所で大事に育てられたらこういう成長の仕方をするのだろうか。
    「そういや、セシル達も……こいつのこと、ガキ扱いするよな……」
     しかも相当に幼い子供に接するかのようにリディアに接している事が時々あるのだ。リディアは確かにこの仲間内では最年少なのだろう。だが、そのように扱うほど子供でもないはずなのだが。
     リディアが語ろうとしなかった過去に、その答えがあるのかもしれない。
    気にならないと言えば嘘になる。だが、遠慮なく踏み込んでいい過去でもないのだろう。いつの日か、リディアが自ら語ってくれるまでは。
     強引な自分らしくない思考に、エッジは苦笑いを浮かべつつドワーフ城内を進んでいく。そうして、リディアを彼女に与えられた部屋まで運んだのだった。 

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