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    FINAL FANTASY W 〜悲しみの連鎖・2〜

     火のルビカンテ。カインが呟いた四天王最強の男の名に、セシルは思わず息を呑んだ。
     そうして、視線を赤いマントの男に向ける。
     確かに、彼が放つ威圧感は凄まじいものがある。セシルは、しばらく様子を窺っていたが、やがて意を決して気配を殺しながら歩き出した。
     ゆっくりと近づくと、ルビカンテと白衣の男の会話が聞こえてきた。
    「私は地上に戻る。……ここは任せたぞ、ルゲイエ」
     ルビカンテの言葉に、ルゲイエと呼ばれた白衣の男は深々と頭を下げた。
    「はい、お任せを。ルビカンテ様」
     その返答にルビカンテはひとつ大きく頷くと、赤いマントを翻した。そのままつかつかと靴音を立てて、部屋の中央へと歩いていく。そのルビカンテの姿が、ふっと消えた。
     目を見開くセシル達の目の前でルビカンテを見送っていたルゲイエだったが、やがて頭を下げたまま肩を震わせはじめる。
     フロアに、ルゲイエの高らかな笑い声が響いた。
    「ヒャヒャヒャ! ゴルベーザ様もルビカンテもおらん! わしがこの塔の最高責任者だ!!」
     そんんあルゲイエの様子に、リディアが呆れたような表情でぽそりと呟く。
    「……変なおじいさん……」
    「しっ」
     ローザが人差し指を口元に当てるが、遅かった。ルゲイエがくるりとこちらを振り向いて、目を見開いた。
    「貴様、セシル!? 何故ここにっ!?」
     そのセシルの横に並んだカインが、槍を構える。その行動に、ルゲイエは小さく息を呑んで一歩下がって身構えた。ルゲイエの交戦の意思を見て取ると、カインは口元に小さく笑みを浮かべる。
    「ふっ。ルビカンテのいない貴様に、俺達が倒せるのか?」
     だが、ルゲイエは引かない。
    「な、なめるな! 四天王には選ばれなかったとはいえ、ゴルベーザ様のブレーンと言われるこのルゲイエとその息子が、貴様らを葬り去ってくれるわ!」
     唾を飛ばしつつそう叫んだルゲイエは、白衣のポケットから手のひらに収まるほどの箱を取り出し、その中央のボタンを押した。
    「来い! バルバナ!」
     セシル達が千党体制を整える中、フロアの壁の一部が開き、そこから巨大な機械人形が音をたてながらこちらに向かって歩いてくる。
     息子というのはこのバルバナという機械人形のことらしい。
     その口ぶりからして、ルゲイエが造ったのだろう。ゴルベーザのブレーンというのはあながち嘘でもないらしい。恐ろしい頭脳である。
    「ゆけ! バルバナ! やつらをこてんぱんにするのだ!!」
    「ウガー!」
     ルゲイエの指示に、バルバナが両手を振り上げて応じ、動き出す。大きさのせいか動きは鈍いが、繰り出す攻撃は強力そうだ。
     セシルはちらりとローザに視線を走らせた。ローザも無言で頷く。
    「我らに聖なる守護と盾を与えたまえ! プロテス!!」
     ローザの詠唱とともに、セシル達の身体を淡い光が包み込む。
    「カイン! ヤン! バルバナに集中攻撃だ! リディア! 魔法を!」
    「了解」
    「心得た!」
    「うんっ!!」
     三者三様の答えがフロアに響いた。セシル、カイン、ヤンは三方向からバルバナに攻め寄る。バルバナはそれをゆっくりと見渡して、動きを止めた。戸惑っているようにも見える。ある程度の思考能力はあるようだが、同時に攻められてどう対応していいのか判断がつかないらしい。
     判断できたとしても、この三人のスピードについてこれるとも思えないが。
    「……我、リディアの名に於いて命ず! 来たれ、天かける閃光を司る者。断罪の剣を持つ智者よ! この罪深き者達に裁きの雷を降らせたまえ!」
     幼さの消えたリディアの力強い詠唱を背に、連携を深めたセシル達の攻撃が次々にバルバナに決まる。
     バルバナがぶんぶんと腕を振り回すが、目標を定めていない攻撃など、当たるはずもない。
     強い魔力の奔流を背に感じたセシル達は、その場から飛び退いた。そこに、リディアの呪文が完成する。
    「我が呼び声に応えて出でよ! 雷の賢者――ラムウ!」
     召喚魔法の完成とともにその場に現れたのは、白い髭を蓄え杖を持った老人だ。老人が杖を天にふりかざすと、白銀の雷がルゲイエとバルバナに降り注いだ。

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