FINAL FANTASY W 〜霧の中の真実・5.5〜
全身が痛い。
朦朧とする意識の中、脳裏を過ぎるのは二つの面影。
その二人は自分にとって、とても大切なかけがえのない存在で。
この関係は変わらずに続いていくのだと、信じていた。
だが、気づいていしまった。自分の抱く感情に。彼の想いの行く先に。彼女の瞳に宿る色に。
そして……自分が一人取り残されてしまったことに。
孤独なのだと、気付いてしまった。
手を伸ばしても、届かない。彼も彼女も、自分が手を伸ばしていることにすら気付かない。行ってしまう。誰も、自分の心の内を見ようとしない。知ろうとしない。
――……憎いか。
心の奥底に、誰のものとも知れない声が響く。自分の声ではないことは確かだ。では、この声の主は誰なのか。彼でも彼女でもないことだけは確かだった。
――……憎いか。この者達が。
憎いだなんて、そんな訳がない。
そう思うのに、反論しようにも声が出ない。
――……憎かろう? 貴様に見向きもしないその者達が。貴様を独りにするその者達が。……貴様の抱える葛藤に気付きもしない、その者達が。
違うと思うのに、思考はそれ以上まとまらない。
――……何が違うのだ? 貴様はよく堪えた。もう、その必要はない。己の心に正直になる時が来ただけに過ぎぬ。憎しみに……心の闇に身を委ねるのだ。そうすれば、貴様のすべき事が見えてくる。
委ねる……。闇に……。そんな……あいつを、裏切るような真似は……。
――……何をためらう。最初に裏切ったのは……その者だろう?さあ、己の心に自由に生きるがいい。
…………。そう、だな。
――……さあ、目覚めの時だ。
声と同時に、目を覚ます。同時に眦から一粒、雫が滑り落ちた。
最後の良心が零れ落ちた、気がした。